本分野では、生体膜、蛋白質や細胞などの生体分子集団の構造・機能・ダイナミクスの新しいイメージング法の開発とそれを駆使した生体分子集団のダイナミクスの素過程の解明により、生体系を支配する物理法則や設計原理を明らかにする研究を行っている。
山崎研究室では、ペプチド/タンパク質などの外来分子と生体膜の相互作用や生体膜のダイナミクスの解明のために、直径10 m以上の生体膜1枚からなる巨大リポソーム(GUV)を用いた「単一GUV法」(図1)を開発している。単一GUV法では、生体膜の機能やダイナミクスのイメージングを行い、統計的な解析よりそれらの素過程の速定数を求めることができるので、それを用いて生体膜の機能やダイナミクスの素過程やメカニズムを解明する研究を行っている(図2)。またこれらの研究を深めるために、種々の物理的な方法論も用いている(図3)。さらに、生体膜のナノメータースケールの構造変化や相転移を明らかにする研究も行っている。生体膜のキュービック相と液晶相間の相転移が静電相互作用で起こる ことを発見し、そのメカニズム等を研究している(図4)。
粟井研究室では,シアノバクテリア(図5)などの光合成生物を利用した
膜脂質の生理機能,有用物質生産に関する研究を行っている。光合成膜は光を効率よく吸収するため,幾重にも折り重なった膜構造を構築しているが(図6),そのためには膜を形作る膜脂質が多量に必要となる。そこで,光合成膜では光合成で作られる糖の一種であるガラクトースを用いて膜脂質を合成しているが,なぜガラクトースなのかは明らかではない。そこで,その謎を明らかにするため,顕微技術を用いた研究を進めている。
岡研究室ではX線回折・散乱法を用いた新たな測定法の開発を行いながら、脂質のキュービック相の単結晶試料の作成(図7)や、脂質膜の相転移(図8) および蛋白質の構造変化を研究している。