たけのこの中にある白い粒は、チロシンという物質だといわれています。そこで実際に白い粒とチロシンをテラヘルツで測ってみると、ほぼ同じスペクトルが得られました。
医薬品の検査などの用途も考えられます。例えば、サリドマイドはかつて薬害を引き起こした医薬品として有名です。サリドマイドには、同じ分子式でありながら、異なる性質を持つ2種類の分子が存在します。サリドマイドの場合、一方の構造は薬として働きますが、もう一方は同時に催奇性を持つ構造でした。一説によると薬害は、薬の構造のサリドマイドに、わずかに有害な構造のサリドマイドが含まれて処方されたために引き起こされたといわれています。
サリドマイドのテラヘルツ分光吸収スペクトルを示します。薬として効く構造のサリドマイドが(+)で示されています。(±)は、薬として効く構造と有害な構造を等量混ぜたものです。このふたつはすっかり異なるスペクトルを示しますので、これを利用して有害成分の混入を容易に見つけることができます。 |

代表的な糖であるグルコースを用いた実験です。黒色のスペクトルが通常のグルコース、オレンジ色のスペクトルがグルコースに放射線をあてたときのものです(5Kは温度)。オレンジ色のスペクトルのピーク位置が、黒色とは少しずれています。これはグルコースに放射線をあてたことにより、分子のどこかの部分に欠陥が生じた結果だと考えられます。これを利用すればサリドマイド同様、医薬品などの品質をチェックすることができるようになるかもしれません。
|

テラヘルツ波を分子に照射することにより特定の結合が励振され、このことが化学反応を誘発することがあります。注射などで体内に投与された薬剤は体内において特定の分子と結合し、その分子との間で、ある周波数で振動しながら存在します。
癌細胞のみと結合する薬剤があるとき、その薬剤と結合している癌細胞の振動周波数に相当するテラヘルツ波を照射すればその振動だけ励起し、癌細胞と薬剤との間でのみ選択的に反応を誘発させることができます。また、癌細胞にも特有の吸収周波数があるはずで、特定の周波数のテラヘルツ波を当てることにより診断ばかりでなく治療も行うことができるようになります。
|