第28回応用物理学会論文賞(2006年度)JJAP論文賞
受賞日:2006年8月29日(第67回応用物理学会秋季学術講演会、滋賀県草津市)
受賞者(論文著者): 堀口 誠二(秋田大学),藤原 聡(日本電信電話),猪川 洋(静岡大学),高橋 庸夫(北海道大学)
論文タイトル: Analysis of Back-Gate Voltage Dependence of Threshold Voltage of Thin Silicon-on-Insulator Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor and Its Application to Si Single-Electron Transistor
掲載号:Jpn. J. Appl. Phys. Vol.43, No.4B, 2004, pp.2036-2040
概要:シリコン活性層を極端に薄くしたSOI (Silicon on Insulator)は、LSI素子の微細化による性能向上をより一層推進できるものとして期待されている。それ故、そのデバイス物理を明確にしておくことは、新たな素子設計論を展開して行く上で重要である。とりわけ、活性層が極薄であるために生ずる量子力学的効果の影響に関する理解は最重要課題である。本論文は、電子の波動関数の広がりの重要性を極めて明快に示したものである。
厚さが10〜30nmのシリコン活性層をチャネル部とするSOI-MOSFETのキャリア伝導を、シュレジンガー・ポアソン方程式を基礎とするシミユレーションと系統だった実験結果とを対比させながら論じ、活性層内部でのキャリアの波動関数に由来する存在確率分布が、しきい値電圧に反映されることを実に明瞭に示している。波動関数の重心位置を、シリコン基板をゲートとするバックゲートにより制御するというエレガントな手法で実験を進めている。SOI-MOSFETのしきい値は、通常はフロントゲート側の酸化膜とバックゲート側の酸化膜によっておよそは確定するが、活性層が極薄になると電子や正孔の波動関数がしきい値に顕著に影響することを、実験との精密な対比で示している。それに加えて、チャネル部をアイランド状にした単電子トランジスタにおいても、電子の重心が電流のピーク電圧に影響を与えることを明確に示している。
以上のように、本論文は、今後ますます重要となる極薄のSOI-MOSFETにおける量子力学的効果の重要性を、独創的な実験手法とシミュレーションの対比で明確に示したものであり、設計論のみならず、特性揺らぎなどの解析の基盤となる考え方を提供しているものと評価できる。また、明快な論理展開は、洗練された論文として読者に多くの示唆を与え得るものであり、JJAP論文賞にふさわしい。
(応用物理 第75巻 第8号 (2006) 962頁より転載)